Derived Data — 通貨分解 / 観測日
155→159の戻りは
「ドル買い」ではなく
「円売り」だった
EUR/JPY を第三の脚に使った、USD/JPY 変化率の二元分解
- Observation
- 終値
- Published
- Source
- OANDA USD/JPY 1D
OANDA EUR/JPY 1D - Derived
- EUR/USD=合成値
(実勢レートではない) - Status
- REVISED
2026-08-15 evidence_class明示
2026年7月30日の日米協調介入後、USD/JPY は8月3日の 155.226 を安値に、8月14日終値 159.357 まで戻した。この戻りが「ドルが買われた」結果なのか「円が売られた」結果なのかを、EUR/JPY を第三の脚に使って機械的に分解した。
要旨:介入局面(7/29→8/3)はドル特定の下落成分を含むが、戻り局面(8/3→8/14)は円全面の下落である。EUR/JPY の上昇率(+1.637%)が USD/JPY の上昇率(+1.375%)を上回り、合成EUR/USD は +0.258% と、ドルはむしろ弱含んだ。ドル要因は戻りに対してマイナス寄与だった。本稿は方向感の提示を目的としない。分解結果と、その再現手順および留保条件を記載する。
01手法
USD/JPY の変化率は、恒等式として次の2成分に分解できる。
USD/JPY 変化率 ≒ (円要因) − (ドル要因) 円要因 = EUR/JPY の変化率 … 円がユーロに対してどれだけ下落したか ドル要因 = 合成EUR/USD の変化率 … ドルがユーロに対してどれだけ下落したか 合成EUR/USD = EUR/JPY終値 ÷ USD/JPY終値
すなわち、EUR/JPY が動かず USD/JPY だけが上がれば「ドル買い」、EUR/JPY が USD/JPY 以上に上がれば「円売り」と判別できる。ユーロを計算単位(ニュメレール)に置いた、最も単純な二元分解である。
02局面別の分解結果
| 局面 | 期間 | USD/JPY | EUR/JPY | 合成EUR/USD | 円要因 | ドル要因 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 介入 | 7/29 → 8/3 | −3.820 | −3.473 | +0.361 | −3.473 | −0.361 |
| 戻り | 8/3 → 8/14 | +1.375 | +1.637 | +0.258 | +1.637 | −0.258 |
| 8/10 単日 | 8/7 → 8/10 | +0.952 | +0.819 | −0.132 | +0.819 | +0.132 |
介入局面では USD/JPY の下落率(−3.820%)が EUR/JPY の下落率(−3.473%)を上回っており、差分の −0.361% がドル特定の下落成分にあたる。合成EUR/USD が上昇していることと整合する。
戻り局面では符号が反転する。EUR/JPY の上昇率が USD/JPY の上昇率を上回り、ドル要因は −0.258%、すなわち戻りに対して逆方向に寄与している。この期間、円はユーロに対しても下落しており、USD/JPY の上昇はドル側ではなく円側で発生した。
介入局面と戻り局面は、同じ通貨ペアの上下動でありながら、動いている通貨の脚が異なる。
038月10日の単日分解と暦
窓内(7/29〜8/14)でドル要因がプラスとなった営業日は8月10日のみである。大きさは +0.132%、USD/JPY 159円台において約21pips に相当する。同日の USD/JPY 上昇は +0.952%(約150pips)であり、うちドル特定成分は約14%となる。
| 日付 | 曜日 | 邦銀営業 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2026-08-10 | 月 | 営業 | 五十日(10日)。連休前最終営業日 |
| 2026-08-11 | 火 | 休業 | 山の日(国民の祝日)。仲値なし |
| 2026-08-12 | 水 | 営業 | 盆期間 |
| 2026-08-13 | 木 | 営業 | 盆期間 |
| 2026-08-14 | 金 | 営業 | 盆期間 |
8月10日は五十日であり、かつ祝日を挟む休みの前の最終営業日にあたる。ここまでは暦の観測である。
以下の記述は機序に関するものであり、観測所が公開する区分(OBSERVED/DERIVED/DETERMINISTIC_CLASSIFICATION)に属さない。会則 v0.2 第8条第3項により区別して明示する。観測結果として扱ってはならない。
五十日は輸入決済に伴う仲値需要が構造的に集中しやすい日付条件を満たしている。ドル特定成分が窓内でこの日にのみ観測されたことは、この日付条件と時系列的に一致する。ただし本稿は帰属を検証していない(§8-4)。この機序の検証は観測所の領分ではなく、為替介入研究所の領分である。
ただし、当該成分は約21pips であり、8月3日から8月14日までの戻り幅(+2.162円)を説明する規模ではない。
04留保:8月11日〜14日は情報量が乏しい
| 日付 | 日中値幅 |
|---|---|
| 2026-08-11 | 46.8 pips |
| 2026-08-12 | 97.1 pips |
| 2026-08-13 | 54.3 pips |
| 2026-08-14 | 21.0 pips |
8月14日は米小売売上高およびミシガン大学消費者信頼感指数(速報)の公表日にあたるが、日中値幅は21.0pips にとどまった。同期間は日本の祝日および盆期間と重なっており、また月末の大口オプション期日を控えた期間でもある。
したがって、この4営業日の膠着から需給の枯渇や充足を推定することはできない。本稿はこの期間について判断を保留する。
05日次データ
| 日付 | USD/JPY | EUR/JPY | 合成EUR/USD | UJ % | EJ % | EU % | 値幅(pips) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026-07-29 | 163.438 | 187.414 | 1.1467 | — | — | — | 67.8 |
| 2026-07-30 | 159.547 | 183.926 | 1.1528 | −2.381 | −1.861 | +0.532 | 578.7 |
| 2026-07-31 | 157.452 | 181.551 | 1.1531 | −1.313 | −1.291 | +0.022 | 360.9 |
| 2026-08-03 | 157.195 | 180.905 | 1.1508 | −0.163 | −0.356 | −0.193 | 266.2 |
| 2026-08-04 | 157.746 | 181.922 | 1.1533 | +0.351 | +0.562 | +0.211 | 77.0 |
| 2026-08-05 | 157.770 | 182.280 | 1.1554 | +0.015 | +0.197 | +0.182 | 57.0 |
| 2026-08-06 | 158.462 | 182.610 | 1.1524 | +0.439 | +0.181 | −0.256 | 99.6 |
| 2026-08-07 | 157.805 | 182.396 | 1.1558 | −0.415 | −0.117 | +0.299 | 190.9 |
| 2026-08-10 | 159.308 | 183.890 | 1.1543 | +0.952 | +0.819 | −0.132 | 173.9 |
| 2026-08-11 | 159.290 | 183.866 | 1.1543 | −0.011 | −0.013 | −0.002 | 46.8 |
| 2026-08-12 | 159.426 | 183.738 | 1.1525 | +0.085 | −0.070 | −0.155 | 97.1 |
| 2026-08-13 | 159.518 | 183.908 | 1.1529 | +0.058 | +0.093 | +0.035 | 54.3 |
| 2026-08-14 | 159.357 | 183.866 | 1.1538 | −0.101 | −0.023 | +0.078 | 21.0 |
UJ = USD/JPY、EJ = EUR/JPY、EU = 合成EUR/USD の前日比。
06再現手順
import pandas as pd
u = pd.read_csv('OANDA_USDJPY_1D.csv') # time, open, high, low, close
e = pd.read_csv('OANDA_EURJPY_1D.csv') # time, open, high, low, close
for df in (u, e):
df['time'] = pd.to_datetime(df['time'], utc=True, format='mixed')
df.set_index(df['time'].dt.date, inplace=True)
m = u[['close', 'high', 'low']].join(e[['close']], rsuffix='_e')
m['eurusd'] = m['close_e'] / m['close'] # 合成EUR/USD
def decompose(a, b):
a, b = pd.Timestamp(a).date(), pd.Timestamp(b).date()
uj = (m.loc[b, 'close'] / m.loc[a, 'close'] - 1) * 100
ej = (m.loc[b, 'close_e'] / m.loc[a, 'close_e'] - 1) * 100
eu = (m.loc[b, 'eurusd'] / m.loc[a, 'eurusd'] - 1) * 100
return {'USDJPY': uj, '円要因': ej, 'ドル要因': -eu}
decompose('2026-07-29', '2026-08-03') # 介入
decompose('2026-08-03', '2026-08-14') # 戻り
decompose('2026-08-07', '2026-08-10') # 8/10単日
07出典と provenance
| 価格系列 | OANDA USD/JPY 日足、OANDA EUR/JPY 日足 |
|---|---|
| 系列期間 | 2002-05-06 〜 2026-08-14(各6,306本) |
| 観測日 | 2026-08-14(同日終値) |
| 合成系列 | EUR/USD=EUR/JPY終値÷USD/JPY終値(実勢EUR/USDではない派生値) |
| 派生値 | 変化率・日中値幅はいずれも上記終値・高安からの機械的計算 |
| 暦情報 | 山の日=国民の祝日に関する法律に基づく8月11日 |
| 公表日 | 2026-08-15 |
| status | PUBLISHED(改訂時は revision_date を付す) |
正本の検証
本稿の正本はMarkdownファイルであり、そのSHA-256を以下に示す(会則 第45条)。表示形式と正本に齟齬があるときは正本が優先する。
参照した二次情報
本稿の分解結果は上記価格系列のみから導出されており、以下は文脈の記載にとどまる。いずれも二次情報として扱う。
- CFTC建玉報告(8月11日時点、8月14日公表)に関する各社報道 ― Legacy Non-Commercial/Leveraged Funds の水準
- 8月10日の東京市場に関する市場コメント(輸入企業のドル需要に言及したもの)
- 米小売売上高・ミシガン大学消費者信頼感指数の公表日程
08方法上の限界
- ユーロは中立な計算単位ではない。 期間中にユーロ固有の材料があれば、円要因・ドル要因の双方が汚染される。厳密には通貨バスケットによる多元分解が望ましい。
- 日足終値のみを用いている。 東京・ロンドン・NYの時間帯別寄与は分離できない。8月10日の仲値仮説を直接検証するには分足が必要である。
- 合成EUR/USDは実勢レートではない。 同一ソース・同一足切りの2系列から算出しているため時刻ずれは小さいが、実勢EUR/USDとの一致は保証されない。
- 本稿は帰属を検証していない。「円が売られた」ことは示せるが、誰がどの目的で売ったかは価格系列からは特定できない。
免責 — 本稿は一次価格系列および機械的に再現可能な派生値の提示を目的とするものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。相場の予想や投資判断の提供を行うものではなく、金融商品取引法上の投資助言に該当することを意図していません。掲載内容の利用によって生じたいかなる損害についても、当方は責任を負いません。投資判断はご自身の責任においてお願いいたします。
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本稿は CC BY 4.0 で提供します。/ ドル円観測所 運営:AIMQL合同会社